ピアスの穴あけは、見た目としては小さな穴でも、体にとっては「皮膚に新しい傷ができた状態」です。開けた直後のホールはまだ薄い膜で安定しておらず、少しの摩擦や汚れでも赤みや腫れが出やすいです。「もう完成した」と思って早めにアクセサリー感覚で扱うと、清潔でなくなったり、引っかけて傷が広がったりして、トラブルにつながる場合があります。
ピアスの穴あけの方法も、ピアッサーかニードルか、セルフか医療機関かで、皮膚への負担や衛生面の考え方が変わります。どの方法でも共通して言えるのは、開けた直後の期間は免疫が落ちた日ほど炎症が起きやすく、ケアを雑にすると化膿や痛みの原因になりやすい、ということです。ファーストピアスの時期は「清潔」「圧迫しない」「むやみに触らない」を軸に、ホールが安定するまでの流れを丁寧に進めるのが安心につながります。
ピアスホールが膿む原因
ピアスホールは皮膚に開けた小さな傷口で、完成して安定するまでの間は、外からの刺激や菌に対して守りが弱い状態が続きます。そのため、ほんの小さなきっかけでも炎症が起き、化膿してしまうことがあります。
原因1:清潔が保てていない状態が続く
いちばん起こりやすいのは「清潔が保てていない状態が続くこと」です。手指には目に見えない細菌が付着しており、気になって触る回数が増えるほどホール周囲に菌が入りやすくなります。ファーストピアスの時期はとくに、ホールの内側がまだ安定していないため、触る、回す、引っ張るといった行為そのものが刺激になります。洗浄が不十分だったり、シャンプーや洗顔料が残ったままだったり、入浴後に濡れた状態を放置したりすると、湿気と汚れが合わさって菌が増えやすくなり、赤みや痛み、腫れが出やすくなります。さらに進行すると膿む状態になり、臭いが強くなる場合もあります。
原因2:摩擦や圧迫などの物理的刺激が積み重なる
髪の毛が絡む、マスクやイヤホン、ヘルメット、寝具が当たる、衣類の着脱で引っかけるなど、日常の小さな負荷が積み重なると、皮膚がこすれて炎症が起きやすくなります。つけっぱなしの状態でも、ピアスが動くたびにホールの内側がこすれていることがあり、そこに汗や皮脂が重なるとトラブルが起きやすくなります。キャッチを強く締めすぎて皮膚が圧迫されると、血流が落ちて治りが遅くなり、化膿に進むこともあります。
原因3:金属アレルギーや素材による刺激がある
金属アレルギーがある場合、ピアスの金属が汗などで溶け出した成分が皮膚に触れ、かゆみや赤み、ジュクジュクした炎症が起きることがあります。この炎症が続くと皮膚のバリアが弱くなり、二次的に細菌が入りやすくなって膿む流れにつながります。素材が不明なアクセサリーや、メッキがはがれやすいアイテムは刺激が出やすいことがあります。反対に、チタンなど比較的トラブルが起きにくい素材が合う人もいますが、どの素材でも「合う・合わない」はあり得ます。セカンドピアスへ切り替える段階で症状が出る場合は、素材の変更や形状による摩擦が関係していることが多いです。
原因4:洗いすぎ・消毒しすぎで皮膚が荒れる
膿むのが怖くて、アルコールなど刺激の強い消毒を繰り返したり、強くこすって洗ったりすると、皮膚が荒れて炎症が長引くことがあります。消毒はやればやるほど良い、というものではありません。皮膚が傷ついて乾燥やひび割れが起きると、そこから菌が入りやすくなることがあり、かえって化膿のきっかけになる場合があります。洗浄は「やさしく、洗い残しを減らす」ことが大事です。
原因5:免疫低下など体調の揺らぎが影響する
睡眠不足や疲れ、ストレスが続くと免疫が低下し、普段なら問題になりにくい菌でも炎症が強く出やすくなります。風邪気味の時期や、生理前後などで体調が揺らぐタイミングに、赤みや腫れ、痛みが増えて「膿む前兆」のように感じる人もいます。ホールから出る分泌物が増えたり、リンパ液が出る量が増えたりして、黄色っぽいカスがついて見えることもあります。ただし、リンパ液と膿は性質が違います。リンパ液は回復過程でも出やすい一方、強い痛みや熱感、腫れの悪化、臭いの増加を伴うなら、化膿が疑われます。
原因6:肉芽(にくげ)など、別タイプのトラブルが混ざる
ピアスホールの周囲がぷくっと盛り上がって赤く見えたり、触れると出血しやすかったりする場合、単純な膿ではなく、刺激に対する皮膚の反応として肉芽ができていることがあります。肉芽があると、分泌物が増えたり、洗っても落ち着きにくかったりして、膿んでいるように見えることがあります。こうした状態は自己判断が難しいため、悪化していく場合は病院で医師に確認してもらうようにしましょう。
ピアスホールから出る「リンパ液」と「膿」を見分ける
ピアスホールから液が出ると、すぐに「膿んだ」と決めつけたくなりますが、回復過程で出るリンパ液のこともあります。リンパ液は無色透明から薄い黄色で、さらっとしていて臭いがほとんどありません。一方で膿むときは、濃い黄色から黄白色で粘り気が強く、強い臭い、痛み、腫れ、熱感を伴いやすいです。黄ばんだカスのように固まって見えるものも、乾いた分泌物のことがあります。見分け方は「色・匂い・粘度・痛みや腫れの有無」を重視すると整理しやすいです。
「ピアスが膿んでいるサインは?」赤みが広がる、触ると熱い、ズキズキする痛みが増える、膿が出る、臭いが強くなる、などが目安になります。
膿んでいると感じたときの対処方法
ピアスホールが膿んだときは「無理に絞り出さず、やさしく洗い、清潔を戻す」ようにしましょう。膿を押し出そうとすると、皮膚を傷つけたり、細菌を奥に押し込むことがあります。ぬるま湯のシャワーでそっと流し、低刺激の石けんをよく泡立てて、周囲をやさしく洗い、最後にしっかりすすいで石けん成分を残さないようにします。その後は清潔なガーゼなどで水分を軽く拭き取ります。
「消毒をした方がいい」と思いがちですが、刺激の強い消毒液はかえって皮膚を荒らすことがあり、消毒のしすぎにも注意が必要です。
市販の軟膏を使うときのポイント「成分」と「目的」
軽い赤みやかゆみだけなら、まずは刺激を減らして様子を見ますが、膿が出る、腫れが強い、痛みが増すなどの症状がある場合は、市販薬もおすすめです。市販の軟膏にもいくつかおすすめがありますが、まずは自分の症状に合う医薬品を選ぶことが前提です。添付文書に沿って使用し、合わないと感じたら早めに医師に相談しましょう。
テラマイシン軟膏a
抗菌薬(抗生物質)を含む外用薬の代表例として、テラマイシン軟膏a(抗菌成分としてポリミキシンB硫酸塩とオキシテトラサイクリン塩酸塩を含む)があります。化膿性皮膚疾患などに用いられるタイプで、黄色い軟膏として説明されることもあります。
クロロマイセチン軟膏2%A
クロロマイセチン軟膏2%A(抗生物質クロラムフェニコールを成分として含む)も知られています。ただし抗生物質は、合わないとアレルギー反応が出ることもありますし、長期連用を避ける注意が添付文書で示されています。
ベトネベートN軟膏AS
たとえばベトネベートN軟膏ASは、ステロイド成分(ベタメタゾン吉草酸エステル)と抗菌成分(フラジオマイシン硫酸塩)を配合していると説明されています。ジュクジュクした患部に向く設計とされる一方で、ステロイドは使い方を間違えると悪化につながることもあるため、自己判断でだらだら使うのは避けたいです。
ドルマイコーチ軟膏
ドルマイコーチ軟膏は、2種類の抗生物質(バシトラシン、フラジオマイシン硫酸塩)と、炎症とかゆみを抑えるヒドロコルチゾン酢酸エステルを配合するとされています。名前の中にドルとマイシンが入っていて覚えやすい反面、こちらも用法用量を守ることが前提です。
オロナインH軟膏
オロナインH軟膏は、殺菌成分としてクロルヘキシジングルコン酸塩配合の皮膚疾患・外傷治療薬として案内されています。やさしく覆うように使える場面もありますが、ピアスホールの化膿が疑われるときは、まず洗いと乾燥、必要に応じて皮膚科での治療を視野に入れた方が安心です。
ヒルマイルドクリーム
ヒルマイルドクリームは、ヘパリン類似物質0.3%配合の乾燥肌治療薬として説明されており、保湿や皮膚コンディションの調整が主目的です。膿が出る段階の「抗菌」目的とは方向が違うので、症状が落ち着いて乾燥が気になるときのサポートとして位置づけると混乱しにくいです。
市販の薬を使っても腫れが続く、硬くなる、痛みが強いなどのときは早めに病院への受診をお勧めします。
金属アレルギーが疑われるときは、ピアスの素材を替える
膿が続くように見えても、実は金属アレルギーで皮膚炎が起き、二次的な感染が重なっていることがあります。安価なアクセサリーで素材が不明なものほど、汗で金属が溶け出しやすいということがあります。
選ぶなら、チタンやサージカルステンレスなど、アレルギーが起きにくいとされる素材を選ぶようにしましょう。セカンドに替えるタイミングでも、最初は軽くてシンプルな形状の方が、引っかかりが少なく皮膚への負担を抑えられます。
予防は「触らない・乾かす・圧迫しない」
ピアスホールが膿まないための予防は、汚れた手で触らない、ピアスを頻繁に動かさない、キャッチを締めすぎない、運動や入浴やプールなどで水分や汗が増えた日は丁寧に洗浄する、清潔の基本を淡々と続けることです。
症状が続くときは病院へ
ピアスホールが膿むときは、まずリンパ液との違いを見て、洗浄で清潔を保ち、刺激の強い消毒は控えめにします。もし「痛みが増す」「腫れが引かない」「膿が出る」「臭いが強い」「熱感がある」「ピアスが埋もれそう」といった症状がある場合は、皮膚科・美容クリニックなどでの治療をお勧めします。放置で悪化するケースもあるため、ピアスを外すかどうか、塞ぎたくないかどうかも含めて、状態に合わせた相談をしましょう。
病院でよく行われるピアスホールが膿んだ時の治療
軽度から中等度の感染が疑われる場合、まずは患部を清潔に保つケアを前提に、抗菌剤の軟膏や、必要に応じて抗生物質の内服が検討されます。「消毒を頑張るほど良い」と思いがちですが、消毒液が溜まって刺激になることもあるため、病院では“洗って汚れを落とす”をしつつ、薬は目的に合わせて治療を行います。
膿が溜まっている時の「排膿」
膿が皮膚の中に溜まって袋状になっている、触るだけで強く痛む、腫れが硬く盛り上がる、といった状態では、薬だけで引かないことがあります。その場合は、膿を外へ出す処置(排膿)を検討します。自分で押し出すと皮膚を傷めたり、炎症を広げたりすることがあるので、病院で安全に判断してもらう方が安心です。
ピアスを外すかどうか
膿んだ時に一番迷うのが、ピアスを外すかどうかです。病院では、感染の強さ、ピアスの材質による刺激、ホールを残したいかどうかを踏まえて判断します。ホールを残したい場合には、治るまでシリコンチューブを入れて維持する場合もあります。自己判断で抜き差しを繰り返すより、診察の場で「塞ぎたくない」と伝えるようにしましょう。
埋没している場合は局所麻酔で取り出す
腫れでキャッチが皮膚に食い込み、ピアスが埋まってしまう「埋没」は、セルフで何とかしようとすると悪化しやすいトラブルです。病院では局所麻酔をして、必要なら小さく切開してピアスを取り出す処置を行います。まずは早めに受診して、皮膚のダメージが増える前に受診するようにしましょう。
肉芽(にくげ)ができたら
膿に見えていたものが、実は肉芽(ピアスホールの周囲がぷくっと盛り上がり、赤いしこりのように見える)を伴うトラブルということもあります。肉芽は刺激が続いた時に起こりやすく、病院では軟膏治療に加えて、硝酸銀での焼灼や液体窒素、ステロイド注射、切除など、状態に合わせた処置が行われます。
金属アレルギーやかぶれが疑われる時
赤みやかゆみが強く、ジュクジュクしているのに膿の量は多くない、といった場合は、感染よりもかぶれや金属アレルギーがベースにあることがあります。病院では、素材を替える提案や、炎症を抑える外用薬の使い分けを含めて、皮膚の症状に合う治療が行われます。
ピアスホールが膿むときのよくある質問
ピアスの膿はほっといても治りますか?
軽い刺激で出た分泌物なら落ち着くこともありますが、膿が続く、腫れや痛みが増える、臭いが強いなどがあるなら放置は避け、洗いと乾燥を徹底しつつ、早めに皮膚科・美容クリニックへ行くことをお勧めします。
ピアスホールから黄色いカスが出てくるのはなぜですか?
リンパ液や軽い出血が乾いて固まったもの、皮脂や石けんカスが混ざったもの、感染で出た膿が乾いたものなど、いくつか考えられます。
ピアスが膿んでいる時に放置しても大丈夫ですか?
腫れが強い、痛みが増す、熱感がある、膿が多い場合は放置せず、病院(皮膚科・美容クリニック)で治療を受けた方が良いでしょう。市販薬だけで改善が難しいケースもあります。
