シミは多くの人が抱える肌の悩みのひとつです。鏡を見るたびに「増えてきた気がする」「若い頃の紫外線が今になって出てきているのかもしれない」と感じることは珍しくありません。日本では四季を通して紫外線が降り注ぎ、日常生活のあらゆる場面で肌は光ダメージにさらされています。シミは老化の象徴として扱われることもありますが、正しく理解すれば予防も改善も確実に進めることができます。
紫外線とシミのメカニズム
紫外線は、太陽から放射される電磁波の一種です。これらの光線は肉眼では見えませんが、長時間浴びると皮膚に害を及ぼします。紫外線にはUVA、UVB、UVCの3種類があり、UVA光線は、紫外線の中で最も長く、最も有害なタイプです。皮膚の奥深くまで浸透し、DNAに損傷を与える可能性があります。UVBはUVAより短く、皮膚に深く浸透しません。しかし、皮膚にダメージを与え、日焼けの主な原因となります。
UVAが引き起こす深いダメージと慢性的な色素沈着
UVAは波長が長く、雲の日や冬でもほぼ一定量が降り注ぎ、窓ガラスを通過するため、室内でも知らず知らずのうちに浴びてしまいます。太陽光の中で最も割合が高い紫外線であり、日常生活のなかで常に浴びている光線といえます。特に厄介なのは、窓ガラスを通過して室内に入り込む性質です。家の中や車の中にいても、肌はUVAの影響を受け続けています。
UVAは真皮まで届く
UVAは、肌の奥にある真皮まで届きます。真皮はコラーゲンやエラスチンなど、肌の弾力やハリを支える大切な構造が集まる場所です。この層に紫外線が入り込むと、コラーゲン繊維が破壊され、エラスチンの劣化が進み、肌は弾力を失っていきます。これが長期的に続くと、シワやたるみとなって表面化します。さらに、真皮のダメージは慢性的な色素沈着を引き起こし、肌全体がくすんで見える原因にもなります。
シミの形成においても、UVAはメラノサイトを刺激し続ける力が強く、肌の内部では見えないうちからメラニン生成が促されています。解消されないまま蓄積されたメラニンが、時間経過とともにゆっくりと表面に現れるため、「いつの間にか濃くなっている」という形でシミとして気づかれるようになります。この現象は、UVAが一年を通して肌へ作用し続けることから「生活紫外線」と呼ばれる理由でもあります。
UVBがもたらすダメージと炎症後の色素沈着
UVBはUVAに比べて波長が短く、肌の表皮に強いエネルギーを集中させる紫外線です。
肌の内部まで届く力は弱いものの、短時間で皮膚に炎症を起こします。日焼けをしたときに現れる赤みやほてり、水ぶくれなどは、UVBによる急性の炎症反応です。炎症が長く続くほど、肌を守るためにメラノサイトはより多くのメラニンを生成します。メラニンは本来、紫外線ダメージから細胞を守るための防御反応ですが、過剰に生成された場合やターンオーバーが乱れている場合には、そのメラニンが肌内部に残り、色素沈着へとつながります。これがいわゆる「日焼けによるシミ」であり、紫外線を浴びてから数週間後に目立ち始めることが多い理由です。
UVBは夏場に特に強くなるため、「夏だけ気をつければいい」と考えてしまいがちですが、春先から急増し、秋にかけて減少していくという特徴があります。気温が高くなくても紫外線量は上昇しているため、季節に関係なく注意が必要です。
UVAとUVBの違いがシミの種類を左右する
UVAとUVBの作用の違いは、シミの種類にも関係しています。
真皮にまで届くUVAは、長期間蓄積してできる「日光性黒子」や「慢性のくすみ」に関係する傾向があります。これは、長年浴び続けた紫外線の履歴が肌の奥に残り、その慢性的なダメージがゆっくりと表面化していくためです。
表皮に急激な炎症を起こすUVBは、日焼け直後に発生する炎症後色素沈着や、強い紫外線に数時間さらされたことによって生じる濃いシミの原因になります。海水浴や屋外スポーツ、レジャーなどで短期間に大量のUVBを浴びて赤くなった経験がある人は、その後数ヶ月以内にシミが出現しやすくなります。
紫外線が肌の与える影響
紫外線の作用は「浴びたその瞬間」だけでは終わりません。肌に届いた紫外線は細胞のDNAに損傷を与え、ダメージは肌内部に長く残ります。これが数年後にシミとして現れたり、シワやたるみとして肌の質感を変えたりする原因になります。現在見えているシミやくすみの多くは、過去数年の生活習慣や紫外線対策の結果といえます。
UVAとUVBにはそれぞれ異なる特徴があるものの、どちらも共通して「メラニン生成の引き金になる」という点は同じです。そのため、日常的な紫外線対策はもちろん、日焼け後の丁寧なケア、そして肌の回復力を高める生活習慣の見直しが、未来のシミを減らすうえで大切になります。
日焼けのシミとは
紫外線を浴びることで生じる日焼けによるシミは、皮膚にできる黒い斑点(メラノサイト)です。太陽黒子や老人斑とも呼ばれます。
シミの大きさは、小さなソバカスから大きな斑点までさまざまあります。日焼けによるシミは、日光にさらされた体のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、顔、手、腕、背中などに多く見られます。
日光性黒子(老人性色素斑)も紫外線が影響している
シミのなかでもっとも広く知られているのが「日光性黒子」と呼ばれるタイプです。老人性色素斑とも呼ばれ、長い年月にわたり浴び続けた紫外線が肌の表面に形となって現れたものです。淡い茶色から濃い褐色までさまざまな色調があり、輪郭が比較的はっきりとしているのが特徴です。頬、手の甲、背中など、日光が当たりやすい部分に多く見られます。特に肌の色が白い人はメラニンによる防御力が弱いため、このタイプのシミが目立ちやすくなります。
紫外線を浴びてからシミができるまで
米国国立衛生研究所のデータによると、シミの原因となるメラニンは、紫外線を浴びてからわずか6~12時間で生成されると言われています。それが目に見えるシミとして定着するまでには、数週間〜数ヶ月必要です。「昨日の日焼けが今日のシミになった」というわけではなく、シミは時間差で現れます。
逆に言えば、日焼け直後のケアが適切であれば、将来のシミ発生を大きく減らすことができます。
日焼け直後に行うべきアフターケア
日焼けをしてしまった直後は、肌は軽いやけどのような状態になっています。このタイミングがシミ予防において最も大切な時間といえます。
まず炎症を鎮めることが必要です。肌が赤くほてっている段階では、冷水のシャワーや濡れたタオル、保冷剤をタオルに包んで当てるなど、とにかく冷やすことが優先されます。ほてりが治まったら、痛みやかゆみを抑えるために、抗炎症成分を含む軟膏や塗り薬を使用するとよいでしょう。
その後は、乾燥を防ぐためにたっぷりと化粧水を含ませたローションパックや、アロエベラ、ヒアルロン酸を含む保湿ローションで肌に水分を与えます。
炎症が完全に治まったら、医薬部外品の美白化粧品でシミのケアを始めましょう。炎症が落ち着いた段階で美白ケアを始めることが、メラニン定着を防ぐうえで役に立ちます。ビタミンC誘導体やアルブチン、トラネキサム酸、ハイドロキノンなどの成分は、メラニンの生成を抑えたり、できてしまったメラニンを薄くする作用が期待できます。
水ぶくれや強い痛みが出ている場合は日焼けのレベルが高いため、念のため皮膚科を受診することをおすすめします。
日常のスキンケアがシミ予防につながる理由
毎日のスキンケアでは、洗顔と保湿がシミ予防の基本となります。洗顔では、泡立てた洗顔料を使い、できるだけ肌をこすらないように優しく洗います。摩擦は肌に刺激を与え、色素沈着を悪化させる原因になるため、タオルで拭き取るときも強くこすらず、軽く押さえて水分を取るようにします。洗った後はすぐに化粧水を肌に届け、手のひらで温めながら浸透させます。そのうえで乳液やクリームで水分を閉じ込め、肌のバリア機能を整えます。乾燥はターンオーバーを遅らせ、メラニンが排出されにくい状態を作り出すため、日々の保湿が未来の肌を左右します。
日焼け止めは一年中必要
紫外線対策の基本は日焼け止めです。
多くの人は夏だけ使用する傾向がありますが、紫外線は一年中存在します。曇りの日でも、晴天時の6〜7割ほどの紫外線が地上に届いているため、季節を問わず対策を続ける必要があります。SPF30以上の日焼け止めを使用しましょう。日焼け止めは「量」が非常に重要で、少量では十分な効果が得られません。顔全体にはパール粒二つほどの量をまんべんなく塗り広げ、首や耳、うなじも塗り漏れしないようにします。外にいる時間が長い日や、汗をかきやすい環境では2〜3時間おきの塗り直しが理想的です。メイクをしていても、スプレータイプの日焼け止めや、日焼け止め効果のあるファンデーションを使うことで塗り直しが簡単になります。
