ほくろとは
ほくろは、皮膚の色素細胞が変化して増えたもので、医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」という分類になります。「母斑細胞(ぼはんさいぼう)」の増殖による皮膚良性腫瘍の一種です。ほくろの色が黒っぽいのは、シミと同じく「メラニン」色素が関係しています。
ほくろは、3歳から20歳までの間にできることが多く、平らだったり盛り上がったりすることがあります。茶色や黒色の直径5~6㎜ぐらいで、顔や体のどこにでもでき、年齢とともにその数が増える傾向があります。
顔にほくろが増える原因
顔にほくろが増える原因には遺伝や体質が影響しやすいと考えられています。両親がほくろが多い場合はその体質を受け継ぐことが多く、肌が薄い人や外出が多く紫外線をよく浴びる人は、日々の生活習慣や外的刺激が積み重なって引き起こされるほくろができやすくなることがあります。
遺伝や体質以外は、紫外線や生活習慣、皮膚のターンオーバーの乱れによるメラニン蓄積、ホルモンバランスの変化など複数の要因が関係しています。顔は一年中外気にさらされており、紫外線の影響を受けやすく様々な刺激が積み重なることは、ほくろが増えるリスクになります。
紫外線が原因でほくろが増える
ほくろが増える原因のひとつに「紫外線」があります。
紫外線の中でUVAと呼ばれる長波長は、雲やガラスを通過しやすく、日常生活の中で長時間にわたって肌に降り注ぎます。紫外線が肌に当たると、メラノサイトと呼ばれる色素細胞が活性化し、メラニンを生成します。本来は細胞を守るための反応ですが、過剰に作られると色素が蓄積し、ほくろとして定着することがあります。
このメラニン色素がシミやほくろのもとになります。長時間外で活動する方や、日焼け止めをしないで外出することが多い方は、メラニンが肌に蓄積されやすく、ほくろが増えるリスクが高まくなる可能性があります。
ホルモンバランスの乱れでほくろが増える
妊娠中や更年期には、ほくろが濃くなったり、顔や体に新たなほくろが出てくることがあります。
ほくろが増える原因は、ホルモンバランスの乱れも関係します。加齢や妊娠、出産、生理不順、更年期などでホルモンバランスが乱れると、新陳代謝のサイクルが崩れてほくろが増えるようになります。
また女性は、生理前や妊娠、出産時になると「プロゲステロン」というホルモンの分泌量が活発になり、メラニンの生成が多くなってほくろができてしまいます。
強いストレスもホルモンバランスを崩して、血行不良や肌代謝の低下を招くため、ほくろやシミができるリスクを高めます。
肌のターンオーバー(新陳代謝)の乱れでほくろが増える
ターンオーバーとは、皮膚が新しく生まれ変わるサイクルのことです。健康な肌では、細胞は28日周期で生まれ変わりますが、加齢、睡眠不足、栄養不足、ストレスなどによってターンオーバーが乱れると、メラニン色素が肌に残りやすくなります。メラニンが排出されないと、シミやほくろとして定着しやすくなります。
また、ターンオーバーの乱れは肌のバリア機能の低下も引き起こし、外部刺激に対して敏感な肌になってしまいます。古い角質がたまると紫外線のダメージも蓄積しやすくなるため、適切なスキンケアで代謝を整えることが大切です。
30代以降の大人の肌はターンオーバーの周期が崩れやすいため、ほくろが増えたと思う方も多いかもしれません。
慢性的な摩擦や刺激による影響でほくろが増える
合わないマスクの長時間着用、頬杖をつくクセ、髪が肌に繰り返し当たる、クレンジングや洗顔時の強い摩擦、帽子の縁、衣類の擦れなどは、特定の部位に繰り返し刺激が加わることでメラニンが増えやすくなります。
炎症が繰り返されると、刺激を受けた部位のメラノサイトが活性化し、メラニンを多く作り出します。これが定着するとほくろになりやすくなります。
生活習慣の崩れるとほくろが増える
生活習慣もほくろに影響を与えます。不規則な生活リズムや栄養の偏った食事、睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こし、ターンオーバーを遅らせる原因になります。また、ストレスが多い生活は肌に負担がかかりやすくなり、ターンオーバーが乱れる原因になります。
ほくろに似た皮膚がん
ほくろ自体は良性腫瘍なので、通常は治療の必要はありません。しかし、中にはほくろに似た悪性の病変もあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚のメラニン色素を作るメラノサイト細胞が悪性化した皮膚にできるがんの一種です。見た目はほくろやしみに似ていて手足にできるため、気が付きにくい特徴があります。30歳以上の成人に発生し、急にできたほくろや、大きくなってきたほくろ、色合いが変わってきたほくろには注意が必要です。
先天性色素性母斑
先天性色素性母斑は生まれつきある黒褐色のほくろ(あざ)です。先天性色素性母斑は通常のほくろと同様に良性腫瘍ですが、放置しておくと悪性黒色腫に進行する可能性があります。特に、大きな先天性色素性母斑ほどリスクが高まるため、切除できる大きさのものは早めに切除しておいたほうがよいでしょう。
基底細胞がん
基底細胞がんもほくろと間違われやすい皮膚がんの一種です。表皮の最下層にある基底層や毛包に発生し、高齢者に多く、顔に出来やすい特徴があります。
突然ほくろができると、不安になるかもしれませんが、多くのほくろは良性腫瘍なので心配ありません。ほくろが悪性化することは稀と言われています。例えば、悪性黒色腫(メラノーマ)は発症した段階から悪性で、ほくろが変化して悪性になるわけではありません。
ほくろを増やさないための予防方法
顔にほくろが多くなるのを防ぐ、またはすでにあるほくろを目立たなくするためには、日常生活の中での習慣づくりがとても大切です。
ほくろを増やす紫外線対策を徹底する習慣
紫外線はほくろの増加に直結する大きな要因です。ほくろが増えないようにするためには、紫外線対策が重要です。
顔は一年を通して露出しているため、季節に関係なく紫外線対策を行いましょう。外出前にはSPFとPA値の高い日焼け止めを顔全体に塗り、耳や髪の生え際、首の後ろまで忘れずにカバーしましょう夏だけでなく冬や曇りの日も紫外線は降り注いでいるため、年間を通して継続することをお勧めします。
つばの広い帽子や日傘、UVカット機能付きのメガネを活用、UVカット効果のある服装を選ぶことで肌への負担を減らすことができます。
肌のターンオーバーを整えるスキンケア
ほくろやシミの原因には、肌の新陳代謝であるターンオーバーの乱れが関係しています。
ターンオーバーが正常に行われないと、メラニンがうまく排出されず、肌に蓄積して残りやすくなるため、日々のスキンケアでは保湿と角質ケアの両方を意識しましょう。保湿はヒアルロン酸やセラミド配合の化粧水・乳液を使って、乾燥によるバリア機能の低下を防ぎます。角質ケアはゴシゴシこすらず、酵素洗顔や弱酸性ピーリングなど肌にやさしい方法を選ぶとよいでしょう。ターンオーバーを正しい周期に戻すことは、色素沈着の予防にもつながります。
栄養バランスの取れた食生活でほくろができるのを防ぐ
ほくろ予防には、メラニンの生成を抑える栄養素を積極的に摂取するようにしましょう。ビタミンCはメラニンの生成を抑制するだけでなく、既に生成されたメラニンを還元して薄くする効果もあり、ビタミンEは血行促進と抗酸化作用で肌細胞の老化を防ぎます。
緑黄色野菜や柑橘類、ナッツ類、アボカドなどを日々の食事に取り入れることをお勧めします。また、亜鉛やタンパク質も肌の再生に必要な成分なので、肉・魚・豆類などをバランスよく摂ることも大切です。偏った食事や過度な糖質摂取は肌トラブルの原因になるため、食事全体のバランスを意識しましょう。
摩擦や刺激を避ける生活習慣でほくろを予防
肌への慢性的な摩擦や刺激は、炎症を引き起こしメラニンの生成を促してしまいます。洗顔やクレンジングの際は、指先でやさしくなでるように洗い、タオルで顔を拭くときも押し当てるようにして水分を吸収させます。
枕カバーやマスクによる摩擦も原因となるため、清潔でやわらかい素材を選び、こまめに洗濯や交換するようにしましょう。アイメイクの落とし残しや強いクレンジング剤の使用も肌の負担となるので注意してください。
ホルモンバランスを整える生活リズム
ホルモンバランスの乱れは、ほくろやシミをできやすくします。女性は妊娠・出産・更年期などでホルモン環境が大きく変わるため、生活習慣でバランスを整えることが大切です。
十分な睡眠を確保し、できれば毎日同じ時間に寝起きすることで体内時計を安定させます。ストレスはホルモン分泌に悪影響を与えるため、軽い運動や深呼吸、趣味の時間を持つなど、リラックスできる時間を意識的につくることをお勧めします。
すでに増えたほくろを消したい場合
すでに増えたほくろを消したい場合は、皮膚科や美容クリニックで相談しましょう。自己判断でのほくろの処理は感染や跡が残るリスクがあるため、専門の医師、クリニックでの除去がお勧めです。
ほくろを取り除く方法には様々あります。炭酸ガスレーザー、ラジオ波メスやくり抜き法、切除縫合などの方法があります。病院、クリニックではほくろのできた場所や大きさ、形状に応じて最適な治療法が提案してくれますので、ご自分の希望に合わせた治療を検討しましょう。
ただし、自己判断での除去は避け、必ず医師に相談することが大切です。ほくろの中には皮膚がん(メラノーマ)など病気が隠れている場合もあるため、診断を受けたうえで治療を検討しましょう。
まとめ
日本人の場合、31~35歳の人で平均して10個程度のほくろがあるといわれています。年齢とともに増えることもあるため、ほくろが増えたとしても過度に心配する必要はありません。ただし、ほくろが大きくなったり、色に変化があったり、出血が見られる場合は、他の病気の可能性もあるため、病院・クリニックで早め受診するようにしましょう。
ほくろが増える原因に関するよくある質問
ほくろが急に増える原因は何ですか?
ほくろが急に増える主な原因は、紫外線による刺激や生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化などが挙げられます。特に紫外線はメラニン色素の生成を促し、ほくろの増加に影響を与えることがあります。また、ストレスや睡眠不足も肌のターンオーバーを乱し、色素沈着を引き起こす要因となり、これらの要因が重なることで、ほくろが増えることがあります。
ほくろができやすい人の体質や特徴について教えてください。
ほくろができやすい人の特徴として、家族にほくろが多い場合、その体質を受け継いでいる可能性があります。また、肌が敏感で刺激に弱い人や、紫外線を浴びやすい生活習慣を持つ人も、ほくろが増えやすい傾向があります。
ほくろを増やさないための予防方法はありますか?
ほくろの増加を予防するためには、日焼け止めの使用や帽子、長袖の着用などで肌を保護して紫外線対策をしっかり行いましょう。また、生活習慣の改善も大事です。バランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレスの軽減が肌の健康を保つようにしましょう。
顔にほくろが多い人はなぜ多いのでしょうか?
顔にほくろが多い理由として、紫外線や生活習慣やスキンケアの影響があります。顔は紫外線を直接浴びやすい部位です。この紫外線がメラニン色素の生成を促進し、ほくろの形成につながります。また、顔の皮膚は他の部位よりも薄く、刺激に敏感であるため、生活習慣やスキンケアの影響も受けやすいです。
ほくろが急にできた場合、病気の可能性はありますか?
ほくろが急にできたり、既存のほくろが急激に大きくなったりする場合、悪性の可能性も考えられます。特に、形がいびつであったり、色が不均一であったり、出血や痛みを伴う場合は注意が必要です。気になる場合は早めに皮膚科を受診し、専門医の診断を受けることをおすすめします。